特集 展望列車きのくにシーサイド

運転区間地図

南紀熊野体験博イベント列車

 JR西日本では、南紀熊野体験博の期間中(4月29日から9月19日まで)、紀勢本線の串本〜新宮間(41.6km)に、新型の展望列車「きのくにシーサイド」運行している。この区間は海辺を走る区間が長く、特急列車が40分で走るところを約1時間かけてのんびり走る車窓からは、黒潮おどる大平洋の雄大な景色をたのしめそうだ。
 乗車定員は124名。特急や急行ではないが全車指定席のため、乗車券のほかに指定席券(510円)が必要だ。
 4、5、9月は1日2往復、6〜8月は1日3往復運転される。運休日もあるので、詳しくは時刻表や、駅のパンフレットなどで調べてほしい。


列車編成図

まさにデラックス版トロッコ列車だ

 列車は4両固定編成の客車(内1両はカフェテリアカー)を機関車が牽引、または後押しする形で運行される。1号車は発電機付のスハフ12、2号車(カフェテリアカー)はオハ25(元オハネだったと思われる)、3号車はオハ12、4号車はオハフ13の、いずれもリニューアル車両が連結される。
 カフェテリアカーの内部はパノラマデッキと名付けられ、都会的な雰囲気のトロッコ車両だ。あとの客車はそのあでやかな外見とは反対に、クラシックで重厚な内装になっている。
 また、喫煙スペースをのぞいて全車禁煙だ。


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車両展示会は神戸、京都、和歌山など6駅で

 車両展示会は運にさきがけ、4月24日神戸、大阪、25日京都、26日天王寺、和歌山、27日新宮と6つの駅で行われた。通常ダイヤの合間をぬっての展示会だけに、ひと駅あたり1時間〜1時間30分と短かったが、多くの鉄道ファンがつめかけた。


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大盛況の大阪展示会

 本紙編集室では4月24日大阪駅3番ホームでの展示会を取材、その模様をレポートすることにした。当日は曇り空で、時折小雨が降る天気だったが、会場は多くの見学者でにぎわっていた。ミス和歌山や熊野詣装束の南紀熊野体験博のキャンペーンガールも彩りをそえた。車両の外観は、近鉄特急もっと派手にした・・・といった感じ。鮮やかなブルーとオレンジ色がまぶしく映った。


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動力源はおなじみのDE10

 新宮側には、客車と同じ色にカラーリングされたDE10型ディーゼル機関車が連結される。串本〜新宮間は現在電化されているが、博覧会終了後は非電化区間での運行も考えての事かもしれない。
 この機関車は、国鉄時代に支線や貨物駅での入れ替え用として誕生した中型機。現在では釧路湿原ノロッコ号や、嵯峨野観光鉄道などのトロッコ列車も牽引して活躍しており、トロッコ列車の定番ともいえる。この日ばかりは、ミス和歌山のおねえさんや、多くの鉄道ファンに囲まれて誇らしげ。いつもは地味な役割の機関士さんも、笑顔でこたえてくれた。


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オープンカフェタイプの展望車

 この列車のいちばんの特徴はパノラマデッキがある2号車だ。24系寝台客車を改造したもので、その高い屋根を生かした開放的な空間は魅力的。展示会は駅の中だけで景色は楽しめなかったが、南紀の海辺を走ったら最高だろうと思われる。
 山側はカフェテラスになっており、車内の売店で買ったドリンクを楽しむことができる。


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豪華な作りのサロンカー

 客車は12系急行形客車を改造したものだが、以前の面影は全くない。クルージングキャビンと名付けられた客室は、木目調の床や天井、美しい二重カーテン、クラシックなランプなど、ヨーロッパの長距離列車を思わせる重厚なインテリア。あずき色のゆったりとしたシートが向かい合わせに並び、その間に大きなテーブルがセットされている。また、壁とつい立部分には20インチの液晶テレビも取り付けられている。
 まさにくつろぎの空間!1時間の乗車時間が短く感じられるにちがいない。


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のっぺりした感じの串本側先頭車

 4号車はオハフ13には運転台が取り付けられ、ここで機関車を制御することができるようになっている。そのため折り返し運転時の機関車の付け替えは不要で、新宮から串本に向かうときはこちらが先頭になる。元々貫通ドアがあった部分をうめた前面はのっぺりした感じ、せめてヘッドマークを付けたらいいのに・・・と感じたのは記者だけではないと思う。
 運転台の隣はパノラマキャビンと名付けられた展望スペースになっている。


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485系リニューアル特急もお目見え

 展示会も終わりに近づいた14時32分、隣のホームに金沢からの特急「雷鳥22号」が到着した。これも国鉄時代製造された車両だが、内外装とも新車同然に大幅リニューアル。青白いプロジェクターヘッドライトが輝く精悍なマスクに、居合わせた鉄道ファンも、盛んにカメラのシャッターを切っていた。実際の営業運転時には、こうして隣り合わせになることなどないが、カラーリングもきのくにシーサイドとよく似ており新しいJR共通のカラーに思えた。 (きのくにシーサイドはその後もイベント列車、季節列車として活躍している)



99年5月号

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