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くしろ湿原ノロッコ号

 くしろ湿原ノロッコ号は釧網本線の釧路−塘路間を走る臨時列車で、毎年5月から9月までの土日祝日(5月3〜5日と7・8月は毎日)に1往復運転される。雄大な釧路湿原を平均時速30kmでノロノロ走るトロッコ列車なのでノロッコ号という愛称が付けられた。普通乗車券だけで、気軽に乗車することができる。我々は釧路駅10時2分の下りに乗車、釧路湿原駅で下車して湿原の景色を満喫し、12時3分発の上りで釧路駅にもどることにした。



列車の乗車券
列車の編成

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遊園地の鉄道みたいに楽しめる

 10時3分、ノロッコ号は特急おおぞらと同じ釧路駅1番ホ−ムを堂々発車。先頭はタンチョウをイメ−ジして屋根を赤く塗られたDE10型ディ−ゼル機関車。その後に工夫を凝らした4両のトロッコや客車が連結されている。釧路側に連結される2両の旧型客車は床の一部がカ−ペット敷きになっており、なぜかビヤガ−デンのような提灯がかけらた白樺の幹が立っていた。また、座席がコの字に配置されていて、6人でワイワイさわぐことができるコ−ナ−もある。また厳寒の地で活躍した客車のため、窓はすべて2重になっていた。


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トロッコ車両は展望抜群

 トロッコ車両は、元は無がい車とよばれる屋根のない貨車。これに丸いテント屋根と椅子、テ−ブルを取り付けて幌馬車風に改造したものだ。雄大な景色を楽しみながら、弁当などを広げることができる。また車内では車掌さんがノロッコ号乗車証明書を配ってくれる。本のしおりとしても使えて便利。また、ノロッコ号とス−パ−おおぞら号のオリジナルオレンジカ−ドも販売している。


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元車掌車にはなつかしのダルマスト−ブがあった

  塘路寄りに連結される小さな車両は、かつて貨物列車の最後尾で活躍した元車掌車だ。窓を向いて座れるように改造されているが、床に置かれた石炭スト−ブ(ダルマスト−ブ)から当時がしのばれる。また、この車両は釧路に戻る時には最後尾になる(写真)。デッキからは流れ行く景色をたんのうすることができる。


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釧路湿原駅はおしゃれなログハウスだ

 10時34分釧路湿原駅に到着、ここで下車する。釧網本線は本線とはいっても特急も急行も走らないロ−カル線だ。この線を走る他の列車は1・2両編成なので、駅のホ−ムは短く、機関車を入れると5両編成のノロッコ号は、はみだしてしまう。このため釧路側の客車と、次の客車の釧路よりのドアからしか乗り降りできないので、他の車両からはあらかじめ移動しておくこと。この駅は釧路湿原が国立公園に指定された翌年の昭和63年に開業した。タンチョウの飛ぶ姿を模したおしゃれなログハウス。JRの制服制帽で記念撮影ができるほか、記念のオレンジカ−ドや入場券の販売もある。ここから徒歩5分ほど登ると細岡ビジタ−ズラウンジがあり、ゆったりとした空間の中でコ−ヒ−や食事を楽しむことができる。(釧路湿原ノロッコ号は2001年50系客車を改造した車両に変更された。)

釧路湿原駅入場券

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トワイライトエクスプレス

 昭和63年のデビュ−以来、そのハイグレ−ドな設備が人気の豪華寝台特急列車だ。大阪、札幌間1500km余りを21時間で結び、鉄道ならではの魅力を満載した車両編成とサ−ビスは他の追従を許さない。14時、札幌駅5番線には2両のDD51型ディ−ゼル機関車を先頭にトワイライトエクスプレスが入線してくる。客車は他のブル−トレインとは違い深い緑色に黄色のストライプ、あの天使が向かい合ったマ−クが印象的だ。14時9分列車は一路大阪に向けてホ−ムを離れた。


列車の編成

列車を単なる移動手段から、旅の目的へと変えてしまう

 大阪寄りの1・2号車は2人用A個室のスイ−トと、1人用A個室ロイヤル。3号車は食堂車「ダイナ−プレヤデス」。4号車はサロンカ−。5〜7号車は2人用B個室ツインと、1人用B個室シングルツイン。8・9号車は4人用個室にもなるBコンパ−ト。10号車はこの列車にエネルギ−を供給する電源車という陣容だ。トワイライトエクスプレスは、列車を単なる移動手段から、旅の目的へと変えてしまうだけの魅力を満載している。子供の頃、親に連れられて特急列車に乗った時の、ワクワクした感動がよみがえった。



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B個室ツインはシンプルだが居心地が良い

  我々取材班は、デラックスにスイ−トといきたいところだったが、切符がとれず断念(予算もなかった)。B個室ツインに入ることにした。上級個室とは違ってテレビやシャワ−、トイレは無いものの、音楽放送や調光式ライト、カ−ド式ドアキ−などの装備もあり、特に不満のないレベルだ。他人の目を気にすることなく、くつろぐことができるのが個室の良さだ。上段のベッドは電動昇降式、就寝時にはソファ−が下段のベッドになる。


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B個室シングルツインもおすすめ

 近くのB個室シングルツインが空室だったのでのぞかせてもらった。ここは1人用の個室だが、補助ベッドを入れれば2人でも使用することができる部屋だ。ツインより狭いので、2名利用はちょっときついが、いつも密着していたいカップルにはおすすめかも知れない。


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列車旅行を演出する食堂車

 かつては大半の特急・急行列車に連結されていた食堂車だが、今では新幹線も含めてごく一部でしか見られなくなってしまった。3号車「ダイナ−プレヤデス」はロココ調のインテリアが美しい豪華な食堂車だ。移り行く車窓の景色を眺めながらの食事は鉄道旅行ならではの醍醐味、ぜひ利用したい。夕食のフルコ−スディナ−(税込み12000円)は予約制で人数も限られているため、すべての乗客が利用するわけにはいかないが、朝食(車内で予約する)やティ−タイム、パブタイムにはだれでも気軽に利用することができる。


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これが日本海会席御善だ

 我々はディナ−が一杯で予約することができなかったため、日本海会席御善(税込み6000円)を予約した。18時頃に客室まで届けてくれる。新鮮な海の幸山の幸を使った2段重ねの重箱で、五角形をしていて狭いテ−ブルにものせることができる。お茶、吸い物付。またこの他にプレヤデス弁当2500円も用意されている。



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いよいよ青函トンネル通過

 19時30分より4号車のサロンでは、青函トンネルの説明会が開かれる。JR北海道函館車掌区の車掌さんが、青函トンネルの建設時や現在の話をユ−モアを交えて解説。またクイズに正解するとちょっとした記念品がもらえたりもする。


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朝食もぜひ食堂車へ

 翌朝、直江津を発車したころから食堂車では朝食タイムが始まる。前日に予約した時間(7時30分)の案内放送を聞いてわれわれも向かった。洋食と和食がありどちらも税別1500円。洋食はたまご料理と飲み物が、和食では飲み物がチョイスできる。どちらもホテル、旅館なみのデラックスさだ。あったかい料理を時速100kmで走りながら口にすることができるのは、やはり贅沢だ。


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機関車も交代する

 トワイライトエクスプレスは1500km余りの長距離を走るため、機関車も線路の形態によって交代する。札幌から函館の五稜郭までは、先にも書いた2両のDD51型ディ−ゼル機関車だ。上野−札幌間を走る「北斗星」の運転に合わせて塗装された寝台特急専用機で、ブル−にゴ−ルドの帯が誇らしげだ。五稜郭から青函トンネルを通って青森までは、赤い交流用電気機関車ED79型が牽引する。そして青森から大阪まではEF81型交直流電気機関車が担当、客車と同じ色に塗られたトワイライト専用機だ。この日は敦賀駅で別の同型機にバトンタッチした。


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終着駅まであとわずか

 トワイライトエクスプレスは特急だがけっして先を急ぐ列車ではない。そのため速さが命の昼間特急「北斗」や「サンダ−バ−ド」には、あえて道を譲る。だが不思議と腹も立たないし、速い特急であわただしく移動しなければならない乗客達が不敏に思えてきたりもする。そんな浮き世ばなれした空間がそこにはある。11時58分京都に到着、外国人観光客らしい男性がものめずらしそうにサロンカ−を覗きこんでいた。京都を出て山崎付近で下りのトワイライトとすれちがう。21時間余りを走行するので毎日運転する時期には、2本のトワイライトすれちがうそうだ。12時42分終点大阪に到着。そこには夢からさめた日常の生活空間が広がっていた。


< オリジナルグッズ

旅の思い出にオリジナルグッズ

また、車内ではさまざまなオリジナルグッズが販売されている。どれも他では手に入らないものばかりだ。車掌や食堂車のスタッフが販売にまわって来るので、気に入ったものがあればぜひ購入したい。(以下いずれも税込み)2枚組オレンジカ−ド2000円、レタ−セット800円、Tシャツ2500円、トラベルセット1500円、キ−ホルダ−1300円。


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