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第七回 華厳の滝のアイスティー


 こんにちは。あうくだの母です。夏のように暑かったり、秋口のようにひんやりとしたり、なんだか調子が狂いがちですが、皆様お元気でしょうか。我が家ではみんなそろって鼻風邪をひいています。あうくだの父(以下、父と記す)は春先の花粉症から引き続き鼻づまり状態で、非常につらそうです。ああ、またティッシュペーパー買わなくっちゃ。


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イメージイラスト イメージイラスト  さて。こんなすっきりしない天気と体調を吹き飛ばすには、さっぱりとしたアイスティーなどいかがでしょうか。
 アイスティーといって私が一番に思い出すのは、梅田の三番街地下2階にある喫茶店「ココリコ」(お笑い芸人ではありません。念のため)。
 ここはパイやタルトがおいしいので有名な店で、夕方や休日の午後には順番待ちの行列ができるほど。紅茶も常時5〜6種類、もちろんポットサービスです。店内は明るくて、テーブルにはいつも一輪挿しの生花が飾ってあって、とてもしゃれた雰囲気なので、学生時代にはよく友達と一緒にティータイムを楽しみに行きました。


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 この店で最初にアイスティーを注文したときのことは、いまでもはっきりと覚えています。氷をいっぱいに入れた大きなグラスとティーポットをお盆に乗せたウェートレスが私の横に立って「失礼します」と言ったかと思うと、ポットを頭上高くにふりかざし、はるか下にあるグラスめがけて紅茶を注ぎはじめたのです。紅茶はまるで糸のように細くなってグラスにふりそそぎ、少しずつ氷を解かしていきました。こうしてグラスになみなみと紅茶がいれられて、私の前に置かれました。 
「ごゆっくりどうぞ」とウェートレスが下がっていってからも、私の目の奥には今しがた見た光景が焼き付いていました。高いところから、まるで滝のように流れおちる紅茶。私はひそかにこのアイスティーを「華厳の滝」と命名しました。
「‥‥あれがこの店の売りなのかなあ」と友達もびっくりした様子。そのあとは、ここでアルバイトするのはたいへんそうだとか、失敗してポットやグラスを割ったら給料から引かれるのだろうかとか、他愛もない話で盛り上がりました。  今でも、このアイスティーのいれ方は変わっていないようで、ウェートレスのみなさんは白いエプロンを紅茶色に染めながらがんばっています。ときどきウェーターがサーブしてくれることがあるのですが、このときはさらに圧巻です。長身のウェーターだとポットからグラスまで1メートル以上。1.2メートルぐらいはあるかもしれません。
 先日、はじめて家族そろって「ココリコ」に行ってきました。「女の人ばっかりだねー」と父は居心地が悪そうでしたが、久しぶりに「華厳の滝」のパフォーマンスを堪能してきました。あうくださんもアップルパイに舌鼓。大満足の様子でした。

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イメージイラスト イメージイラスト  家でアイスティーをいれるときの注意点は、紅茶を濁らせないこと。そのためには濃いめにいれた紅茶をたっぷりの氷の上に一気に注いで、急速に冷やすことが大事です。また、熱いうちに砂糖を加えると、濁り(俗にクリームダウンといいます)が少なくなります。アイスティーにはくせのないセイロン茶やアップルティーなどのフレバリーティーがおすすめ。個人的にはアール・グレイ茶が好きですが。
 このごろは缶やペットボトルの紅茶もおいしくなって、種類もたくさん出ているので、その中から自分の好みに合ったものをさがすのもよいですね。
 ちなみに、あうくださんのお気に入りは「紅茶花伝」のロイヤルミルクティー。牛乳が25%も入っていて、味が濃くておいしいのだそうです。近くのスーパーへ行くたびに「ミルクティー買ってもいい?」と訊かれ、500ミリリットル入りのペットボトルを買っています。先日「冷たいミルクティーが飲みたい」と言われて、買い置きがなかったので私がリーフティーで作ったところ「これ、ちょっと薄いね。(茶葉を蒸らす)時間が短かったんじゃないの?」と言われてしまいました。幼稚園児に紅茶のいれかたを意見されるなんて、まだまだですね、私。
 皆様も、「自分流」のアイスティーを模索してみませんか?
 では、またお会いしましょう。   (つづく)


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1999年6月号

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