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ホビ−ライフタイトル

アクアリウムの楽しみ方2


趣味の写真1

 アクアリウムについてはホビ−ライフの連載が始まった昨年8月号で「ホ−ムアクアリウムの楽しみ方」として紹介したが、当時の編集室にはスキャナ−やデジタルカメラが無く、じゅうぶんな解説ができなかった。そこで今回はこれからアクアリウムを始めようと思っておられる読者の方むけにお届けすることにした。


趣味の写真2

どんな魚を飼いたいかを決める

 アクアリウムという名詞を漢字に直すと水族館となる。水族館というと、大型回遊魚が悠々と泳ぐ巨大施設を連想してしまうが、ここで取り上げるのは個人が趣味としてたのしめる、小さなものについて解説する。
 近年、熱帯魚や水草も種類が豊富で安価になってきたことや、おしゃれなデザインの水槽や水中アクセサリ−が数多く販売されており、インテリアとして、アクアリウムを楽しむ人が増えた。
 アクアリウムと一口にいっても、それぞれの魚のすむ環境に適したものを作る必要があり、どんな魚を飼いたいかを決めることからはじまる。まずは海水魚。写真のようなジンベイザメを自宅で飼う人はいないと思うが、ショップでは色鮮やかな小型の熱帯産の海水魚をよくみかけるようになった。一般に海水魚は淡水魚より環境の変化に弱いため、水温調節のほか、きめの細かい水質管理が必要で初心者には難しい。ショップで売られている淡水魚にはディスカスや、エンゼルフィッシュ、ネオンテトラといった熱帯産のものと、鯉、金魚、アカヒレなど常温で飼育できる魚がある。今回は紙面の関係上、淡水熱帯魚の飼育についてのみ話すが、海水魚や金魚についても基本的なところは同じである。


見取り図

先に飼育器具をそろえる

 ショップではいろいろなデザインの水槽が販売されており、見ているだけでも楽しい。ただ、はじめてに水槽を購入するにあたって著者は、角型の規格品で、予算と設置スペ−スが許す限り大きなものをおすすめする。曲線を多用したインテリア水槽は掃除がしにくいうえ、フィルタ−や照明器具を取り替えようとしても専用のもの以外は使えない。また、小型の水槽は水温や水質の変化がはげしく、管理が難しいからだ。水槽や器具を個別に揃えるより「熱帯魚飼育15点セット」などのネ−ミングで売られているセットものの方がお買得。このほか底砂、水草、水換え用のポンプ、バケツがあれば良い。バケツは絶対にぞうきんバケツと混用しないこと。魚は水槽の水質が安定してから入れるべきなので、同時には購入しない。


淡水熱帯魚水槽のセッティング


セッティングのしかた1

水槽をセットして底砂を敷く

 最初に、すべての器具をよく水洗いする。(洗剤は使用しない)次に空の水槽をセットする。砂や水をいれると60cm水槽でも70kgもの重さになる。重さに耐えられるしっかりした台の上に置こう。木製の戸棚などの上に置くと後日ひずみが出て、扉や引出が開かなくなる事があるので要注意。給排水の設備も近い方が良い。底面フィルタ−を使う場合はこれをセットした後、洗った底砂を敷く。


セッティングのしかた2

水中アクセサリ−をセットする

 ショップでは岩や流木、難破船、恐竜などいろいろな水中アクセサリ−が販売されている。これに限らず、水に溶け出す心配のないものであれば何でも使用できる。好みにあったアクセサリ−を、バランス良く配置しよう。作者のセンスが問われるところだ。流木はあらかじめなべで煮てアク出しをしてから使用する。


セッティングのしかた3

水を入れる

 水は水道水がよい。ただ市販の中和剤で塩素を除去すること。井戸水を使う場合は調整剤でpHや硬度を調整する必要がある。水温計を入れ、水温が低い時はお湯を加えて、25度ぐらいになるようにセットする。


セッティングのしかた4

水草を植え、各種器具をセットする

 ショップで本物、人工物のいろいろな水草がそろっている。以前、人工の水草というといかにも「ビニ−ルで作りました」的なものが多かったが、最近のものは本物と見分けがつかない出来栄えだ。魚に食べられたり、枯れる心配がないので初心者にはおすすめだ。成長を楽しむなら当然本物だ。カボンバやアマゾンソ−ドプラントなど、丈夫で育て易い品種を選ぼう。貝や虫がついている事があるので、よく水洗いしてから植えよう。この後フィルタ−、ヒ−タ−、照明などの器具を取り付け作動させる。そのまま少なくとも1週間運転を続けると(照明は昼の間だけつける)水質が安定し、魚がすむ環境ができあがる。


セッティングのしかた5

魚の搬入は優しくていねいに

 お待ちかね、魚を買いに行こう。ショップではいろいろな魚たちがいて目移りしてしまうが、はじめは1〜3種類にしぼって少めに飼った方がよい。ショップの人に相談して、丈夫で他の魚と相性が良いのを購入しよう。餌もその魚にあったものを用意すること。ショップでは水、酸素といっしょに魚をビニ−ル袋に入れてくれる。持ち帰ったら、20〜30分ぐらいは袋ごと水槽につけ、袋の中と水槽の水温を同じにする。つぎに袋を開け、袋に入っていたのとほぼ同量の水槽の水を中に足して、10分ほど待つ。魚を水槽の水質に慣らすためである。さあ、ゆっくりと水槽内に放してみよう。慣れない環境のため、角の方でじっとしていることもあるが、半日もすれば元気に泳ぐようになる。


その後のメンテナンス

 後は毎日の餌やり時に水温と水、フィルタ−の汚れ、魚の健康状態を目で見てチェクする。異常があれば水やフィルタ−の交換、薬剤の投与などすぐ対処しよう。
 初心者の方から「水換えは何日おきにすればよいのか」という質問をうける事がある。ある書籍には「週に1〜2回行う」と書かれていたが、著者は「汚れたら換える」と答える事にしている。魚と水草のバランスのとれた管理の良い水槽では、蒸発した分を足すだけで、数ヶ月も良好な水質を維持する事ができる。魚を多く入れすぎたり、餌の残りや魚の死骸を放置していたりすると、急速に水質は悪化してしまう。魚の体色が悪く元気のないときは、病気の発生より、水質の悪化を疑ってみることだ。
 これは、生き物を飼うこと全般にいえることだが、飼いだしたからには、それが天寿をまっとうするまでめんどうを見ることが原則だ。あなたの絶えまぬ愛情と努力に、魚や水草たちはきっと答えてくれるはずだ。


97年6月号

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